2015/11/12(木) つづき
今日は専門分野の話もあるので、イントロがチョット長くなります。 お時間の有る方はお付合いよろしくお願いします。
宇佐市を後にして、次の予定の筑豊地方、田川市にあるラピュタファームへ向いました。
私の故郷の宮崎でも、第1次産業の農林水産業が産業の中心ですが、今後の対外競争力強化と付加価値増大による生き残り策として、若い仲間達を中心に、生産(1次)×加工・製造(2次)×販売(3次)=6次産業化を目指しています。
私もその実現の為、色んな相談やお手伝いをしていますが、今迄、全く競争意識がなかった生産者の皆さんにとっては、熾烈な生き馬の眼を抜く、2次・3次産業への参入は極めて高いハードルが待ち構えていると言えます。
知り合いや仲間達との話の中でも、農場や果樹園に併設して、直売ショップを作るとか、農園レストランを開いて、自分で作った採れたての野菜や果物を使った、美味しい料理を提供したら評判間違いなしと、希望に眼を輝かせている方もいらっしゃいます。
しかし、現実には、製造・販売業、レストラン等の起業独立を目指して開業された方々、しかもその道で実務を経験された方でさえ、起業5年後の生存率は15%、そして10年後は6%に過ぎず、20年後は僅か0.3%しか残らないという、厳しい現実があります。
現状を知らずして、生産者の方がそのまま起業されたら、その成功率は更に低いものになり兼ねません。 いくら補助金があるとは言え、数年間は持ちこたえられても、継続的な利益は確保できず、廃業するしかなくなってしまいます。
実際に九州各地で話を聞いても、農産物の直売所に比べると、格段に加工度が高く、衛生管理やサービス提供が伴う、農園レストランの成功例は数少なく、殆どが採算レベルを大幅に下回り、規模やサービスの縮小、或いは家族経営で出来る範囲の業態に変更されたり、経営不振の為、廃業されたりするケースが見られる様です。
データによると、農園レストランは、2011年度全国で1350事業体あり、都市部の小規模レストランレベルの年間売上5000万円以上(月416万円以上)は、僅か、6.6%の89事業体しかなく、それ以外の1261事業体の殆どが個人営業レストラン規模だと思われます。
ちなみに農園レストラン全事業体の平均売上高を算出すると、年間売上は1473万円(月123万円)という規模になります。
この売上を前提に、通常のレストランの様に、従業員を雇って部門別に配置して組織的なオペレーションを行うとしたら、原価・人件費・経費・償却費等を差し引くと、収益を確保するのは極めて困難だと思われます。 小規模経営ゆえに、必然的に家族的経営にならざるを得ない状況が推測されます。
更にこの内、全事業体の約50%を占める小規模の個人事業体、年間売上500万円以下(月売上41万円以下)の場合は、費用を捻出するのが精一杯で、経営者個人や家族の人件費も出ないケースが大半だと推測されます。 ( 参照資料: 農林水産省「6次産業化総合調査」)
そこで、九州内で数少ない、お客様が行列をなして、大繁盛だと評判のラピュタファームを訪問し、その繁盛の秘密と、レストラン運営の実際を目の当たりにし、これから農園レストランを志す、九州の若者達のお手本としたい、というのが今回の目的です。 (前置きが長くなり申し訳ありません)
さて、宇佐市を出発、ナビをラピュタファームにセットし出発です。
国道10号線を北上ししばらくは単調なドライブが続きます。 英彦山が見える辺りから、左折して田んぼ道、山道を走って約1時間45分、そろそろ方向感もなくなり、現在地も定かではなくなった頃、山中のカーブを曲がったら、目の前に案内板が現れました。
ラピュタファーム、到着です!
以下、ラピュタファームのHPより。
果樹園の中のレストラン
田川の風土が育んだ食材と手作りのやさしさを味わってください。
ラピュタのランチバイキングでは新鮮な地元野菜や、厳選した体にやさしい調味料などにこだわり、真心込めてテーブルにお料理をお出ししています。
ラピュタのレストランでは、約60品の手づくり料理に、約40種類以上の野菜や果物を用い、そのほとんどを園内産か地元産の元気な素材でまかなっています。
また調味料についてもミネラルを含んだ「喜界島のザラメ」や、下関市立病院アレルギー外来推奨の「無添加の菜種油」、畠中育雛場の「元気卵」など体に優しい調味料を使用しています。
さらにラピュタ自家製パンやピザ、ケーキ、焼き菓子など小麦は全て国内産を使用しています。
お客様にほんのひととき、心に、体に優しい時間を過ごして頂く事。 それがラピュタの願いです。
まず、ラピュタファームのレストランの様子をご覧下さい。
ラピュタファームの手作りのバイキングレストランです。
自家製パン、ケーキ
色んな手作りの料理で大満足、沢山お替りをして、お腹一杯です。
尚、すべての料理はレシピー公開で、自由に自宅で再現できます。
さて、レストランの外で、ちょっとひと休みです。
ファームの中には色んな建物が散在しています。
まずは、ショップ部門を見学です。
少し離れたところにあるのは加工場、ここで加工作業をやったり、ショップで販売している商品を製造しています。
加工場の中には、加工機、シンクや調理台など、様々な調理・製造設備が設置されています。
今回、田川にあるネットビジネス仲間の、YさんとMさんにラピュタファームにお連れ頂き、お知 り合いのラピュタファーム代表取締役の杉本 利雄さんに、お話を伺うチャンスを作って頂きました 。
沢山の女性中心のお客様達が、行列をなして山奥のラピュタファームに押し寄せ大繁盛が続いています。 ここで食事するには、必ず予約してから行かないと、大行列のあげく時間切れで食事できない可能性もありますので要注意です。
しかしこの大繁盛のレストランも、杉本社長のお話を聞くと、レストランを始められてから、ずっと順風満帆で大繁盛だった訳 ではなかったそうです。
15年以上前の営業開始の際には、果樹園レストランが珍しく、お客様も多く順調にスタートしました 。
しかし数年経つと、当初の人気も翳り始め、何よりレストランの組織運営やオペレーションの質が低 下し、客足の低下と収益の悪化により、やむを得ず休業せざるを得ない状態となったそうです。
この大ピンチの時にレストラン業務に、初めて真剣に取り組んだのが杉本社長でした。
それまで任せっきりだった、レストラン経営の全てを見直し、業務上の課題をすべて抽出して、レストランのポリシー立案から、業務の指揮命令系統、組織体制を再構築され、本当にお客様が喜ぶレストラン造りを実行 されました。
又、独自のマーケティングで、材料はすべて、この果樹園で採れたものか、地元産の農産物だけ(肉・魚無し)にし、メインターゲットを、健康志向のミドルエイジの女性に絞り、斬新なメニュー立案と調理技術を持つ女性を調理の責任者に抜擢し、調理部門の運営を任せ、責任体制を構築。 もちろん、自分自身もオーナーとして現場に立ち、直にお客様に接する体制を確立 されました。
こうして再開したバイキングレストランは、徐々に客足を取り戻し、女性中心のお客様の口コミや雑誌のPR効果もあり、一年後には行列が出来るほどの状態になりました。
最初の頃は、特に男性からは少しでも良いから、肉や魚のメニューも欲しいと言う要望もありましたが 、今ではすっかり認知され、誰も不満や注文を付ける人はいないそうです。
現在では、毎月メニューの70%を新しく入れ替える、月替わりメニューを楽しみに、常連のお客様が継続的 に来店される、九州を代表する果樹園レストランの大繁盛店になりました。
杉本社長のお話を総合すると、果樹園に付属しているレストランというレベルを超えた、都市部の大繁盛店と同等、あるいはそれ以上の、独立したレストランのオーナーとしての立ち位置で、強力な顧客志向のマーケティングの採用と、お客様の目の前で製造と販売とサービスを行うという、高度なレストランのオペレーショ ンを実現された事が、成功の大きな要因に間違いありません。
しかし、杉本社長の目標はこれに留まりません、ようやく軌道に乗ったとは言え、まだまだ抱える課題は残っており、今後は現状の品質を保ちながら、業務が集中している従業員の負担の軽減や交代要員の育成を目指し、高くなり過ぎている材料原価の適正化や、お客様の待ち時間減らす為の食事時間の2回転化、冬季や閑散期の楽しいイベント企画などお客様のサービスレベルの向上と、収益の安定化を次の目標とされているとの事、今までの経営改革に飽き足らず、更に加速されるなど、素晴らしい経営哲学をお持ちの様です。
杉本オーナーのスタート時のご苦労話と、様々なアイデアと試行錯誤で課題を解決して、現在の姿になった経緯をお伺いしてきました。
杉本オーナー、Yさん、Mさんには、お忙しい中、お時間をお取り頂き、ありがとうございました。
やはり、お話をお聞きすると、最初から順調に業績を伸ばして来られたのではなく、自前の果樹園の素晴らしい産物を美味しく調理して提供するというだけに留まらず、繁盛レストランと同等以上の、マーケティング技術の活用、それに加えて、レストランを運営する為の、加工調理技術や、組織構築など、今までの生産者の枠を越える、アイデアの数々と努力を重ねられた結果が、この大繁盛をもたらしたと、納得できました。
美味しい食事と、素晴らしいお話を聞いた、余韻も冷めないうちに田川を後に、今夜の宿、門司港レトロ地区に出発します。
Yさん、Mさん、又お会いしましょう。
田川を出て、一路北九州門司港へ、約50km、1時間の行程です。
ところが、門司港の出口を降り間違え、道路標識は「この先山口県」!
下関ICで一般道路に下りましたが、中々元の道には戻れません。
結局、50年前に通った事のある関門トンネルを潜って、門司側にたどり着きました。 ここらは高速道路や都市交通、一般道が入り混じっており、ようやくナビの指示に従い、ホテルに到着しました。
ホテルにチェックインして、夕食は門司港レトロ地区へ、シャトルバスで3分で到着です。 港の灯りがロマンチックですが、生憎ひとり旅です。
結局、夕食は回転寿司の店、ネタはまあまあだが立地的に高め、
ちょっとつまんで、やはり最後は居酒屋に寄ってしまいます。
すこし外れた場所にあるスナックでもよかったかな?
懐かしい門司港駅、ここから関門連絡船に連結していました。
門司港ターミナル
ここは、昔と換わらない雰囲気です。
ロマンチックな門司港レトロ、独りではあんまり盛り上りません。
ホテルの隣のコンビニで、ビールとつまみを買って帰り、
風呂に入った後に、ゆっくり一杯やる事にしました。
それでは、ようやく2日目終了です。
ゆっくりして眠ることにします。
おやすみなさい。
まだまだ、次回につづきます。