八ヶ岳「赤岳」山歩き(その4)

7/20(木)〜21(金)山岳部:カネヤン

  

ミヤマオダマキ

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赤岳からの急崖下りは、恐怖と闘い、慎重さと集中力を保つこと、だった。

   赤岳。下界から八ケ岳の峰々を眺めると一際鋭く峰が空を突き、印象的な赤茶色の山肌をしている。
   確かに昨日よじ登ったコースは山肌が崩れ、赤茶色の土がむき出しになっていた。
   今下っている山肌は、黒く、堅く、鋭く割けた岩の塊だ。光線の具合では黒い魔の山に見えるかも。
   鎖場もあった、なんてものじゃない。鎖またクサリ、これなしにはたぶん降りることは不可能、そんなところ。

   先頭の、正しくは足下のさらに下方に見えるゴリケンや澄子さん達は時々、岩陰に見えなくなる。
   トンチャンと文子さんは二人してマイペース。上から見ていてへっぴり腰、その必死さが伝わる。
   慎一郎の誘導で真理子さんのゆっくりイズムは確実に。

   恐怖も叫び声をあげて解決できることもある。
   が、ここではそれは通用しない。恐怖も連続すると次第に冷静になっていくようだ。誰一人、声をあげない。
   泣き言を言わない。真剣そのもの。
   そして、下から登ってくる中高年の仲間達、時々は親子連れ、子供達び出会うたびに、皆頑張っているな、
   と励まされる。 たぶん、向こうはよくこんな所を降りられるな、と感心しながら登っているのだろう。
   そんな気持ちの交錯が続く。

   そうこうすること20分、ようやく切り立った急崖の下りが終わる。鎖も見えなくなった。
   道はガレ場になり、そして茶色の土が混じる。少し楽になる。でもこれはこれでちょっとでも油断するとズルッと滑る。  
   滑って擦り傷、はあってもそれ以上ではなく危険地帯が終わった。でもこういう道の方が恐い、というのが文子さんであ
   り、トンチャン。

   行者小屋が右下の見える。緑濃い森の中だ。
   そこに向かって一本の道、多くの人たちが登ってくる。文三郎道だ。
   ようやく、赤岳を振り返り、見上げることができた。
   やはり真っ黒な岩の塊、峰だった。そこにへばりついて、登り降りしている登山者が見える。黒茶色の岩肌にカラフルな服  
   装が映える。あ〜〜、俺達も暫し前まではその一人だったんだ、と不思議。

   緩やかな下り道、目の前に中岳の全景が見える。赤岳頂上からみた中岳はちゃちな山、と思ったが近づくとこれはこれで一  
   人前。
   途中で先行組に追いつく。
   休憩を兼ねて荷物を降ろす。

   そこはコマクサ、その小さな群生地だ。とにかく傷つけないように、痛めないように顔を近づけて観察。
   初めて間近に見たその花、高山植物の女王と言われるが、何が?、よくわからない。が、可憐さは確か。薄いピンクの花 
   弁、その形も独特。
   感激はないが、きてみて良かった、ちょうどいい時期だった、と思う。(中岳途中でも何度も見かけた!)
   あとで聞いたことだが、ここら辺のコマクサ、一度絶滅の危機になり、多くの人たちの努力でここまで回復してきた、との  
   こと。写真だけ、ちょっとだけ、との行為がコマクサ生息地の環境をおびやかす。とにかく、余り近づかないようにしたも 
   のだ。

   赤岳と中岳の中間のコル、に到着。さあ、次はそれなりの中岳に挑戦。
   ここらあたりに来ると何となく人も多く、賑やか。登り下りの双方にゆとりがあるんだろう。
   中岳頂上では休む間もなく、阿弥陀岳を目指す。
   ここからはハイマツやシャクナゲなどの灌木の間を通る道。
   特につかれはないが、さっきの疲れが少しずつ出てきたのだろうか。それとも真上から焼け付くように照らす真夏の太陽の  
   せいか、どこかでゆっくりしたい気分になる。

   歩くこと、約30分。
9:20 ようやく中岳を下り、阿弥陀岳に登る鞍部(コル)に到着だ。行者小屋への分岐点でもある。
   多くの人が休んでいる。炎天下、灼熱地獄の休憩地、という感じ。
   日陰はないか、休むところはないか。見つけたのは少し下ったところに積んである工事用板の山、シャクナゲの木の陰に 
   なった最高の休憩地を見つけた。女性陣、早速ココに座る。

<チョット小休止>

   ここで阿弥陀岳に挑戦するメンバーと休憩組に別れる。
   トンチャン、文子さん、真理子さんの3人は休憩!組。
   男性陣と澄子さんの4人が阿弥陀岳にアタック!(随分オーバーな表現、だね)
   往復の時間は1時間の予定。荷物は置いて行く。飲み物だけを持ってラクチン登山。

   標高2805メートルの阿弥陀岳、この鞍部からの標高差は200メートル。
   登り始めるが、足場は脆く、少々滑りやすそうだ。用心しながら登る。降りてくる人たちもみな軽装だ。道は休むところが  
   全くない、ただ登り続けるだけのところ。半分くらい登ったのだろうか、ゴリケンからちょっと休もう、との声。腰をおろ
   す場所もないが、緩やかなところで休む。
   僅かの登り、といってもやはりこたえる。

10:00 そうこうして25分予定の登りを30分で登る。
   頂上、登りの急峻な雰囲気とは全く違い、ゆるやかで、だだっ広い場所。360度のパノラマ!ガスがかかっていなけりゃ最  
   高の休憩所だ。すぐ隣の権現山はガスで見えたり消えたりだ。編笠山はうっすらとしている。振り返ると先ほどの赤岳が、  
   黒く異様に見える。北に伸びる八ケ岳の山並みもよく見える。
   ゆっくりしたいが、なんせ暑い!!汗も引かない。
   記念写真をとると早々降りることにした。

   下りはやはり一層の神経を使う。
   鎖は一箇所、ちょこっとあるだけで他は全くの自力下山。滑りやすいこともあり、慎重になる。こんなところに女性3人が
   来なくて正解、と正直そう思った。澄子さんの足取りには感心、不安がない。
   無事何事のなく降りることができた。が、このコース、少しでも雨が降ろうなら登るのは止めた方がいい、と痛感。

10:40 休憩中の3人と合流。
   すぐさま、行者小屋に向かって下山。
   木立の中の道、日陰がありがたいが、暑さはどうしようもない。カッツンから聞いていたトリカブトの群生地を探しながら
   ゆくが見あたらない。紫色の可憐は花に出くわすが、残念ながら違った。

   女性陣の疲れは休憩中に回復したのだろう、下りのテンポによどみがない。
   途中の休憩もそこそこそこに一気に行者小屋に降りる。その時間、1時間余。

12:15 行者小屋に着く。
   小屋の前は前日より混雑。ゴリケン先遣隊がテーブルを探すがさすがに今日は無理。
   キャンプ場の一角、緩い坂だが、木陰もあるところで、昼食。
   いよいよ、慎一郎が何度となく報告してきた餅の登場。

   コンロを出し、網を置き焼き始める。コツがわかってきてうまくく焼ける。醤油がだされ、例の高級海苔が出され、磯辺焼 
   きが、、、ウマイ!!
   もう一つのコンロで作ったみそ汁やスープに入れてお雑煮もなかなかいける。いろいな缶詰も出される。
   一人5個を食べた男性陣、早くに箸をおいた女性陣、なんとなく落ち着かない場所での食事休憩だったが、慎一郎君、あり  
   がとう。

   最後に登場したのはなんとスイカ!!だった。
   小玉スイカが2個、ザックの中から出された。皆に黙っていてアアッ!!と言わせようとの魂胆も、お腹一杯、何ももう入  
   らないよ、との雰囲気の中では今ひとつ、だったようだ。ただただ、呆れた、物好き、との顔をされただけ。
   が、中味はまあまあの色と味だった。
   教訓。山にスイカを運び込む物好きも今回限りにしよう。なにせ、重すぎる!

   コーヒーも飲んで少々早いが出発することにした。
13:00 いよいよ、行者小屋とお別れ。八ケ岳、赤岳ともお別れの、出発。
   ここでは皆さん、元気。

   雨の中、ただ黙々歩き続けた昨日の道。同じ道を戻っているのだが、全く違った景色に見える。
   木々が途切れた広い河原、白河原もその広さを初めて知る。
   皆、黙々と歩く。ただ、一番後ろの真理子さんとカネヤンだけがおしゃべりしながら、、、。あんたたち、元気だね〜〜、   
   と羨ましがられるというよりお叱りを受ける。

   駐車場のある赤岳山荘まで1時間半、との甘い判断が皆の疲れに拍車をかけたようだ。(実際は1時間50分くらいかかるの
   が普通)
   出発時は疲れを感じていなかったようだが、蓄積されていた疲れが出てきたようだ。だんだん足が重くなる、足もとがおぼ   
   つかなくなる。口数も少なくなる、がたまに出る会話は愚痴。
   一時間ちょっと歩いた頃、もうすぐだよね、とホッとする。

   登ってくる人たちに声を掛ける。こんにちわ、がんばってください、と余裕。
   ついでに、もうすぐですよね、と確認を得ようとする。と返ってきた答が「そうですね、あと1時間くらいでしょうか」  
   「エッ?!」。再確認までするが、同じ。
   1人目では、登りで疲れているから判断間違いだろう、と気にもしない。
   頭の中の計算ではあと10分くらい。

   2人目に聞く。「あと50分くらいでしょう」「エッ?」聞こえなかった振りして聞き直す。が、やはり同じ。不安が出てく  
   る。これだけで疲れが倍増しそう。
   きっと美濃戸と美濃戸口を間違っているんだよ、と言い聞かせようとするが不安は増長。(登山者が自分の出発地を間違う  
   はずはない。これ当たり前。そんなこと少し冷静に判断すりゃすぐわかること)

   でも3人目、再び「50分くらいでしょう」との答に「美濃戸口じゃなく美濃戸ですよ」と念を押してしまう。余ほど疲れ、
   焦り、正気じゃなかったんだろう。
   行者小屋から2時間近くかかるよ、との頭であればこんな疲れは少なかったかもしれない。ゴメン、よ。

   それからの歩きは皆無言。おしゃべり2人組もバラバラ、モクモク。途中の休憩時もなんとなく気まずい雰囲気。山を、森
   を、草木を、雰囲気を楽しむなんて気にならない。お互いの気遣いも失せてきたようだ。
   それなりの隊列も次第にバラバラ。後続はなんとかいっしょだったが、先頭組はそれぞれの思惑でただ歩くだけ、だったよ
   うだ。

   ちょっと休もうよ、と声を掛けようにも先頭は全く視界の中にない。声が届くようなところじゃないようだ。仕方なく歩
   く。
15:10 砂防ダムが見え、ようやく美濃戸山荘の屋根が見えた。着いた!
   ホットするがそこにも誰も待っていない。先頭はもう車の所まで行ってしまっている。
   後続組のわがままかもしれないが、先を行く元気組、もう少しゆっくり歩いて欲しいものだ。先頭の疲れ具合に合わせてで
   はなく、休憩などの配慮をして欲しかった。これまた教訓かも。

   車に着く。
   が、出発時のドジで、キャラバンのサンルーフが開けっ放しにこの時点で初めて気づいた、次第。
   待ちに待った温泉へ、直行!
   途中少しばかり遠回りをしたが、なんとか温泉に着く。ホットする。
   500円でのんびりできた。

   元気が出る。
   帰りに蕎麦でも食べよう、と富士見町の「おっこと亭」に行く。
   久しぶりの蕎麦。相変わらずだが、ここには蕎麦、だけしかない。ちょっと不満が残るが、蕎麦入りソフトクリームが圧巻  
   だった。中年オバサン組にも気持ちよく大盛りが振る舞われた。2人、3人で一個、昔に戻った気分で舐め合って食べた。美
   味しかった。
   そしてここから「小淵沢IC」まですぐ。
   混むことなしに帰路に。

   ゴリケン号もカネヤン号も無事何事もなく到着できた。
   いろいろなことがあった今回の山行き。無事帰れたこと、たっぷり岩登りが出来たこと、歩けたこと、食べられたこと、花   
   を見ることができたこと、おしゃべりが出来たこと、、、、みな思い出になった。
   そしていろいろな教訓もあった。突然の雨対策が必要とか、スイカなんて持ってくるなとか、日焼け対策も、グループでの
   歩き方にも、、、。そしてそれぞれにいろいろな思いを残してくれた。

ありがとう。
愉快で楽しい友よ、ありがとう。
次の山行きはいつにしようか?

00/08/05
かねやん

PS:ゴリケン、近い打ちに写真(山や花々など)を送る。それもうまく入れて編集してくれ。

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