みんなのメールを楽しく読んでいます。日本語を話す機会がないので有り難いです。 先日植村君のメールを読んでいたら、湯島町内会が出てきたりして、 御茶ノ水に近いではないかと、通常は見ない発信者の住所や所属を見て驚いた。 (高校以下の同窓生とのメールの場合、私は発信者の住所や所属を原則として 見ません。学校時代の面影を大事にしたいからで、変な拘りかもしれませんが、 悪しからず。その割りには、私がうちの学科の就職主任になったときは、 河野君に頼んで東京に居る同窓生の何人かの人に会って、人事課の部長・課長を 紹介して貰いました。おおいに助かりました。 私の大学は関東では存在も知られていないことが多いので、全国区の大学になろうと 四苦八苦しています。皆様。龍谷大学をよろしく。笑いのとれる社員がご希望の 節は龍谷大学に声を掛けてください。閑話休題) 私学共済東京ガーデンパレスではありませんか。私の大学も私学で、したがって 私が利用すると、少し有利な料金で泊まれるはずです。はずです、と言うのは、 めったに泊まったことが無いからです。通常、東京に行くときは学会か研究会の ためで、3泊4日か4泊5日です。年に1回は行きます。また、大学の多い 御茶ノ水界隈のことが多いのです。当然まず御茶ノ水にある私学共済の施設の ガーデンパレスに電話で予約を頼むのですが、大概、中の1日が満室で 連泊できないのです。それで、今までの10年間で2回しか泊まったことが ありません。植村君、次回はよろしく。 さて、正月にメールを皆さんに出したら、面白かったという返事と、もっと 基本的な食生活とかの話のほうが良いという返事と半々でした。それで、今日は 私の食生活事情を報告します。 私は、家内と男の子1人、女の子2人の家族構成です。下2人の女の子が まだ高校1年と中学2年ということで、パリに行くなら勝手にひとりで行けとの 家族の意思で、単身赴任しています。自慢にもなりませんが、今まで自力で自炊した ことがありません。”自力で自炊”とは変ですが、大学時代に友人と組んで 自炊したことはあり、そのときは料理を作るのが友人で、片づけるのが私と、 明確に役割分担していましたから、自炊しても料理を作ったことはないのです。 唯一作れるのが、肉ピーマン炒めだけでした。 朝飯は、パンにコーヒーに生野菜ですみますから、これはアパートで食べる。 昼飯は大学食堂で食える。晩飯だけ外食の積もりでパリに来ました。 パリには1979−81年の2年間留学して以来、2年に1回くらい来ていて、 ソルボンヌ大学のあるカルチェ・ラタンの一角にいつも泊まる安ホテルがあり、 そこを根城にレストランをあれこれ回るのには慣れています。 私は、高級フランス料理は苦手で(あの・・・ア・ラ・クレム、というのがあまり 好きになれません)、もっぱら旧植民地の料理、北アフリカ(チュニジア・モロッコ・ アルジェリア)・中国・ベトナム料理と、あとは韓国・ギリシャそして日本料理を 食べていました。日本料理は、量の割に高いので、焼き鳥屋にしか行きませんが。 今回もその積もりで来たのですが、誤算が2つ。1つ目は、今回は1年間の 滞在ということで、パリ郊外にアパートを借りました。RERという高速鉄道で パリの真ん中から南に15〜20分ほど出た所で降りて、歩10分ですから、 悪くはないのですが、レストランに歩5分以内で行けた常宿よりはかなり遠いです。 誤算の2つ目は、今年のパリの4月は雨が多かったのです。雨の中を30分も掛けて 出かけるのはおっくうで、結局自炊を始めました。始めはスーパーで、電子レンジで チンすればすむ冷凍食品のチャーハンやクスクス(北アフリカ料理)を買ってきて、 それこそチンの5〜10分で出来上がる自炊(自炊とは言わないかな)でしたが、 結構高くつくことに気がつきました。二重生活で必ずしも豊かではないので、 これではいかん、やはり手作り料理で安く上げなければ、と本当の自炊に取り組み 始めました。と言っても、教えてくれるのは、フランス政府の給費留学生として パリに居る、かって私が助手の頃演習を受け持った学生で今は研究者になっている D君だけで、彼が自分の自炊のノウハウを教えてくれるのだけが頼りです。 彼が電子レンジでご飯を炊く方法を教えてくれました。スーパーでタイ米を 買ってきて、これで主食は確保できます。 問題はおかず。とりあえず、野菜は生で食っても死ぬことはあるまいと、 栄養のことも考えて野菜炒めに挑戦。何を入れるのか分からないから、 とにかくジャガイモ・人参・玉ねぎ・きのこ・豆を買ってきて、とにかく適当な量を 切ってみたら、ざるに山盛りになってしまいました。炒めると量が減ると 聞いていたの、炒めてみたら、減るのは減りますが、大山が小山になる程度で、 食ってみたら半分で十分1回の夕食がまかなえます。こいつは良いはと、 それからはこの量で作り、2日に1回料理すれば良いようにしました。 しかし毎日野菜炒めでは飽きます。滑り出し好調(?)に自身を付けて、 焼き魚に挑戦。鯖の塩焼きをしてみました。なぜ鯖かと言うと、学生時代に 鯖の塩焼きをさんざん食って良く知っているから、あれなら何とかなるだろうと 思ったのと、とにかく鯖は安い。失敗して丸ごと捨てても悔しくないくらい安い。 魚屋は常設店は1軒だけで、そこは種類が少ない。水曜日と土曜日に市場が立って、 その市場の中に5軒魚屋が出る。そこで活きの良い鯖が見つかったので、買ってきて 塩をしてオーブンで焼いてみたら、臭い臭い、アパート中に臭いが染み付いて 3日ほどとれませんでした。D君にその話をしたら、「普通、魚は腹腸を取って 焼くものではありませんか?」とのこと。さっそくもう一度鯖を買ってきて、 腹腸を取って焼いてみたら、なるほどはるかに臭くありません。 しかし、それでもフランス人が許してくれる許容範囲は越えていそうです。 (フランス人は焼き魚の匂いがとても嫌いです。初めにて留学したときに留学生寮に 一時居ましたが、焼き魚を食うアフリカからの留学生とヨーロッパ内からの留学生が 焼き魚の臭いの臭さで良く喧嘩していました。始めて鯖を焼いたときに、 苦情を言ってくる人がいないかとかなり心配しました。アパート中に臭いが 行き渡りましたから。) それにアニサキスとか言う虫が居て、良く火を通さなければいけないとのこと、 ”良く火を通す”と言うのはどれくらい焼くことか分からず、これくらい焼けば 間違いあるまいと思うところまで焼いたら炭のようになってしまいます。 それで鯖はあきらめました。 生で食える魚を、ということで、鰯に変えました。鰯は1Kg18〜19フラン (400円)で格安です。これを10匹ほど買うと12〜15フランくらいです。 5匹を刺身にして5匹を生姜醤油に付けます。1日は鰯の刺身を楽しみ、翌日は 鰯の生姜醤油焼きです。生姜醤油焼きなら香ばしい匂いに魚の臭さがマスクされて これなら大丈夫。 しかし、毎回毎回鰯では飽きます。それに魚屋が良い顔をしません。 フランス人はどう料理するのか知りませんが、鰯を買うときは2Kg、3Kgと 買うのが普通で、しかも彼らは他にも2種類ほど買い、最低50フランから ときには200フランくらいの買い物をするのが普通で、毎回毎回15フラン以内の 客は、手間が掛かるだけで煙たいようです。 他に何を買うか?生で食えるかどうかを判断するには、まず変な虫がいないか どうか、それには知らない魚はちょっと怖い。知っている魚で、しかも活きが 良くないといけない。活きの良さはどう判断するか?判断法などは知らないから、 とにかく魚の眼を睨んで、貴様は活きが良いか?と聞いてみる。魚が「うん、 刺身で食えるよ。」と言ったような気がしたら、よし、と判断します。困るのは 切り身の魚で、眼が無いと睨みようが無い。それで、わたしが知っていて、 眼があって、しかも活きが良いものとなると、鰯のほかには鯛くらいしかありません。 鯛はもちろん天然鯛で、1Kg90フラン弱(1800円)。1匹だいたい1Kg前後 です。これを買ってきて3枚におろし、両身は刺身にします。片身で日本の食堂で 出る刺身3人分くらいがとれます。これを1食分にあてます。両身で2日の夕食が 賄えます。真ん中の骨身は3日目に塩焼きで食べます。おろし方が下手だから、 骨身にも結構身が残っていて、十分1食分あります。先程、3枚におろすと気軽に 書きましたが、初めて鯛をさばいたときはあせりました。鰯に較べて鱗も骨も 比較にならないくらい硬いですね。おまけに皮が剥がしにくい。 鯛をさばいた第1回目のときは、刺身とは名ばかり、ぐちゃぐちゃになって 刺身と言うよりミンチのようでした。それでも回数を重ねるということは恐ろしい もので、今ではそれなりに3枚になります。この1年間、活きの良い大振りの天然鯛を たっぷり楽しみました。 鯛というと、和仏辞典にはドラドと出ていますが、仏和でドラドを引くと鯛は 出てきません。日本で言う本鯛は、市場ではドラド・ロゼとなっています。 ドラドはもっと小振りで、もっと貧相で威厳がありません。 そのほかにドラド・ロワイヤル(王様の鯛)というのがあります。王様の・・・という くらいだから美味しいのかと思って一度買ってみました。買うときに嫌な予感が したのです。ドラド・ロゼの悠々とした大物の相ではなく、王様の鯛という割りには 少し小さいし、目つきが悪く威厳が無いのです。刺身にして食ってみたら、 油が乗り過ぎていて、生で食うには耐え難いものがあります。結局半分は洗いにして 油を抜いてやっと食べました。とても生で食えるものではありません。 2度と買いませんでした。 マグロを輪切りで買ってきて刺身にすると、トロも赤みも一緒に楽しめると 教えてくれる人がありました。マグロは頭が落とされていて眼が無いのですが、 これは食わねばと買ってきました。確かにマグロのちょうど真ん中を輪切に切って 貰うとトロが楽しめます。これも1Kg当たりの値段は鯛と同じくらいです。 秋は土曜日には鯛かマグロ、水曜日には鰯と決めて買って刺身を楽しみました。 ですから、週7日のうち、4〜5日は魚を食ってました。 ところが冬になると鯛とマグロが出なくなりました。かわりに晩秋から雲丹が 出ました。殻を入れて1Kg120フラン(2500円)と割高ですので、 そのうちにと思っていたら終わってしまいました。今は帆立貝・牡蠣が盛りです。 牡蠣だけはフランス人が生で食べます。牡蠣の季節は、海産物が自慢の レストランは、表に特設の牡蠣の立ち食いの窓口を設けます。近くの日頃は 海産物を扱わないスーパーの表にも2〜3日だけでしたが、 牡蠣の立ち食いが出ました。 私は、好き嫌いが無いのですが、牡蠣だけは昔食い過ぎてあたって以来どうも苦手で、 残念ながらパス。帆立を楽しんでいます。これも殻をいれて計って1Kg80フラン くらいです。初めて買ったとき、捌こうかと言ってくれるので、頼んだら、 ヒモを捨てそうになったので、それは日本人には貴重だと叫んで残して貰いました。 鯛のまこだって黙っていたら捨ててしまいます。 あとは、スモーク・サーモンをたまに買いますが、キング・サーモンで、 私の好みから言いますと、油が乗り過ぎています。 というようなわけで、完全に日本食スタイルの自炊です。長くなったので、 野菜・果物編はまた後日。 松本和一郎 |